最近の例会

2022年9月3日(土)第150回 塩出浩和 氏

国家安全優先下のマカオ

概要:

香港に於ける2014年のオキュパイセントラル運動(雨傘運動)から2020年の「香港維護国家安全法」制定までの6年間は、この特別行政区において民主化運動と警察が激突し、次第に警察側が有利になるプロセスであった。(あえて「警察」としているのは、香港特区政府トップと香港警察の意識がずれていたからことがあるから)
この間、マカオにおいては激しい民主化運動や反体制運動は起きていない。その背景として、国家安全法制を香港よりも早い2009年に既に制定していたこと、もともとマカオの民主派勢力が弱かったこと、そして香港よりも経済状況が良好だったことなどが挙げられる。
さらに、歴史的な経緯も「マカオの安定」に貢献している。4世紀半にわたりポルトガル人が居住してきたマカオは「大家さん」である中国との付き合い方を心得ている。わずか1世紀半の経験しかない香港よりも中国に「馴化」しているのである。また、1966年12月以後はマカオに於ける重要な政策決定は中国共産党広東省委員会の影響下にあった。そのプロセスのなかで中国もマカオに「馴化」したのである。
とはいえ、マカオに於いても国家安全を理由とする参政権や表現の自由への弾圧はあった。香港の民主活動家の一部は「マカオの国家安全」を理由としてマカオ入域を拒否されている。そして、2021年9月の立法会選挙では複数の民主派現職議員の立候補資格が取り消された。また、最近のいくつかの立法では、国家安全を理由とするさまざまな条項が付加されている。それらの立法には、カジノ関係法・中国伝統医学関係法・通信記録提供法などが含まれる。
従来の、「比較的自由で開かれた社会を保ちつつカジノ中心経済も維持する」という「ハンドリングが難しい狭い道」をマカオは歩むことができるのだろうか。

話題提供者:塩出浩和 氏 城西国際大学准教授

略歴:

1960年 横浜市生まれ
1982年 慶應義塾大学法学部政治学科卒業
1982‐83年 香港中文大学社会科学院留学
1985-89年 Center for the Progress of Peoples 研究員
1986-87年 同クアラルンプール所長
1990年 国際大学アジア発展研究所研究員
2000年 城西国際大学語学教育センター専任講師
現在 同准教授
中央大学経済学部・同大学院総合政策研究科非常勤講師
専攻 中国近代史・華南社会・マカオ


2022年8月20日(土)第149回 江上志朗 氏

蔓延る中国崩壊論の虚実を読む

概要 :

上海市のロックダウン(都市封鎖)や中国不動産大手の債 務不履行(デフォルト)が相次ぎ、中国経済の行方が危ぶま れています。2022 年4~6月期のGDP 成長率は 0.4% となり、中国共産党・政府が掲げる年間成長率目標の 5.5% には届かないことが確実視されています。中国はやはり、このまま停滞 が続き、崩壊の道へと向かうのでしょうか。私の個人的な見 解では、中国は少なくとも5年前に比べれば成長していると 思っています。GDP は 2017 年の 83 兆円から 2021 年は 113 兆円に3割増加。平均賃金は 2021 年には初めて 10 万元(200 万円)の大台を突破し、この5年間で4割近く上昇しています。今回の報告では、5年前に行った報告を検証する形で、悲観的でも楽観的でもない中国の今の姿を浮き彫りにしたい と思っています。

話題提供者:江上志朗 氏 元 読売新聞上海支局長

略歴:

1967 年生まれ、三重県松阪市出身
1992 年 日本大学国際関係学部卒
(中国ジャーナリズム論専攻)
同年 読売新聞東京本社入社。98 年から国際部記者 2001 年 読売新聞上海支局長
2003 年 共同通信グループ NNA 入社
The Daily NNA 中国総合版編集長、本社東アジア部長 2016 年 NNA 退社後、上海から帰国。17 年 6 月に華人研で報告。
2020 年 三重大学大学院教育学研究科日本語学専攻修了同年より名古屋市で国内外の調査業務に従事

共著:「日中関係は本当に最悪なのか~政治対立下の経済発信力」
「日中対立を超える『発信力』」(いずれも日本僑報社)等
趣味:クラシック音楽鑑賞(8/21 は長野県松本市でオペラ鑑賞予定)


2022年7月16日(土)第148回 金銅重弘 氏

中国下の香港

概要:

『日本のバブル経済崩壊(1990年3月)』、『鄧小平の南巡講話(1992年10月)』、『香港の中国への返還(1997年7月1日)』この三点が、アジアを経済面から大きく揺り動かし、Turning Point になり、現状のアジア経済を形成している主な要因となっています。
 この三点が、今の香港経済のどの部分に影響しているかを Review しながら、
コロナ後、中国政府の影響がますます強くなるであろう香港経済がどのような状況になり、どのように進んでいくか?私の運営する会社の香港における CHOYA Brand の現状のエピソードも交えながら、皆さんと考える時間を過ごせれば、幸いですです。

話題提供者:金銅重弘 氏 チョーヤ梅酒株式会社 代表取締役社長

略歴:

1954年 大阪府生まれ 最終学歴:和歌山大学(経済学部)
1983年 蝶矢洋酒醸造株式会社(現:チョーヤ梅酒株式会社)入社。 
     主に海外市場の開拓に携わる。
1996年 同 取締役海外事業部長に就任
2007年 同 代表取締役社長に就任

趣味:  ヨーロッパのワイナリー廻り  ラグビー観戦


2022年6月18日(土)第147回 上田幸和 氏

製品デザインと中国での経験

概要:

東京で10年大阪で30年間、製品デザインを続けていますが、その間10年ほど、北京の映像機器企業のデザインを担当致しました。
 そこで経験した中国人技術者の性格やエピソードを交えて製品開発ステップ全般のご紹介と、これまで国内で製品開発に携わった商品を、事例を使って解説いたします。ビジネス的な内容で、中国研究にはなりませんが、現在お仕事に携われている方々で、なにかしらデザイン的な事に関わる時も有ろうかと存じます。その時に役立つ知識の一助になれば幸いです。

話題提供者:上田幸和 氏 有限会社インターデザイン研究所 代表取締役

略歴:
1951年 滋賀県彦根市生まれ
1971年 東京デザイン研究所 工業デザイン科卒
1971年 大阪の照明器具企業就職
1973年 東京移転
1975年 インターナショナル工業デザイン(I I D)入社
1990年 インターデザイン研究所 設立  現職
公益社団法人 日本インダストリアルデザイン協会正会員
同協会 理事 2010~2020年まで 10年間在職
特許庁 意匠派遣アドバイザー


2022年5月21日(土)第146回 斎藤 治 氏

新中国70年史を翻訳して

概略:中国人が自国の現代史をどのように書いているのかに興味を抱き、2019年の中華人民共和国建国70年に出版された新中国70年史の翻訳に挑戦した。 中国語は初心者であったが、2年間をかけ、本の形になった。 翻訳を通じて感じた発見や考えたことについて話してみたい。

話題提供者:斎藤 治 氏 白鷹堂主宰フリージャーナリスト

1954年青森県弘前市生まれ

1979年 慶應義塾大学商学部卒、読売新聞大阪本社入社

1998年 経済部次長 2001年 調査研究室研究員

2014年 退職、編集・企画の白鷹堂設立

2017~2018年 台湾国立成功大華語中心留学


2022年4月16日(土)第145回 竹根幸生 氏

アジア食べ物・お薬事情異聞

キン・メダイ これ食べていい?

概要:食が足りることは人の幸福の基です。健康はすべての人の願いです。大阪が発祥である薬屋の歴史をたどりながら、最先端の人や動物の科学に触れてみます。そして、渡航回数の多いアジアの国々での食と医にまつわる座右の銘(温故 敦行 求実 拓新)を基にした見聞をお話します。そして、「米を作って食を語る」をモットーに、福井と大阪を行き来する私のSGDsライフスタイルの一端もご紹介いたします。

話題提供者:竹根幸生 株式会社J-ARM 代表取締役

略歴:

1954年 福井県大野市生まれ。大阪大学 工学部 発酵工学科卒

1978年 大日本製薬㈱入社後、食品素材事業に従事。

2002年タイ国(ロブリ市)に現地農業資本、商社と食品素材の製造会社を設立(取締役)。

2003年中国(昆山市)に台湾企業との食品素材加工会社を設立  (董事長)。渡航歴は、アジア・欧米を中心に500回を超える。 合併後(大日本住友製薬)、医薬品事業に異動(執行役員)。診断薬、細胞事業を行うDSファーマバイオメディカル(株)の代表取締役社長を退任後、動物の細胞再生医療事業を行う㈱J-ARMの代表取締役に就任。

2021年3月、製薬会社と共同開発した犬の椎間板ヘルニアの細胞医薬品が承認を取得(世界初)。


2022年3月19日(土)第144回 前田尚香 氏

中国の生活に根ざす三国志 

ー中国伝統演劇と『三国志演義』ー
全て旦はご本人

略歴:前田 尚香(まえだ ひさか)氏 崑劇研究者

1989年 同志社大学商学部卒業。
2003年 北京師範大学中国文学部博士課程卒業。
2002~04年 在中国日本大使館広報文化センター専門調査員。
2007年~京都大学等非常勤講師。
1989年~北方崑曲劇院著名女優・張毓文に師事。五十以上の崑曲伝統劇を学ぶ。
2001 年より江蘇省崑劇院の著名女優・張継青にその代表作『牡丹亭』等を学ぶ。
 北京・上海、京阪神・東京などでの舞台公演、シンポジウムなどに多数参加。
 伝統演目脚本整理などにも携わり『崑劇芸術家馬祥麟演出劇目集』等を作成。


2020年2月26日(水)第143回 三村光弘 氏

地域大国として台頭する中国とその周辺地域

朝鮮半島を中心に

海に遊びに来た大学生たち(スマホを見よ!)
ピョンヤン地下鉄の新しい車両の中?
パキスタンで展開する中国移動通信の子会社Zongの広告
パキスタン・グワダル港の入口
講演案内

中国は習近平政権下で、一帯一路戦略や「中国製造2025」など、自国を地域大国として位置づけようとしています。米国は、覇権国としてこれまで提供していた国際公共財や同盟国に対する安全保障協力を軽視し、覇権を放棄しようとしているようにも見えますが、中国に対しては、自国の覇権に挑戦する勢力として、封じ込め戦略を取る一見矛盾した政策を展開しています。今回は、米国から挑戦されつつも、地域大国としての存在感を見せつつある中国が、周辺諸国にどのような影響を与えることになるのか、朝鮮半島を主に、パキスタンの例も含めて、現状を報告してみようと思います。

三村光弘 氏 略歴

公益財団法人 環日本海経済研究所 調査研究部主任研究員
2001年より新潟にある環日本海経済研究所(ERINA)に入所。現在、調査研究部主任研究員。北朝鮮の法律、経済を研究している。年に1~3回北朝鮮を訪問するほか、韓国、中国、ロシアを頻繁に訪れ、現地の研究者や実務者と交流を行っている。最近は中国の一帯一路に関心を持ち、周辺国における中国の経済活動について調査・研究を行っている


2020年1月22日(水)第142回 辻田素子 氏

ベトナム・ダナンに進出中小企業―日中比較

ダナンの中国系カジノ
中国系カジノとその周辺に立地する中国系飲食店
講演案内

新聞記者時代に、中小企業の多様性やその可能性に心惹かれました。30歳代半ばで研究者の道を志し、以来、中小企業や地域産業を研究テーマにしています。国際的に活躍する温州人の社会的つながりに注目した『コミュニティー・キャピタル: 中国・温州企業家ネットワークの繁栄と限界』(西口敏宏との共著)は、2017年度 日本ベンチャー学会清成忠男賞 書籍部門、平成28年度 中小企業研究奨励賞(経済部門) 本賞を受賞。現在の関心事は、中小企業の国際化と老舗企業(事業承継、経営革新)です。

辻田素子 氏 略歴

龍谷大学  経済学部  教授
1988~1998年まで読売新聞大阪本社勤務。 2006~2014年 龍谷大学経済学部准教授、2014年より現職


2019年11月27日(水)第141回 中津幸久 氏

『北京1998』余話

講演案内

新聞記者時代、中国、東南アジアを舞台に国際報道に携わってきました。中国では北京特派員時代の1998年、報道内容をめぐり、諜報機関の北京市国家安全局の取り調べと家宅捜索を受け、国外退去処分を受けました。その顛末をまとめた『北京1998 中国国外退去始末記』(集広舎)を今年6月に上梓。本会合では、本書の内容を踏まえ、中国の言論統制、中国特派員が置かれた状況、習近平政権の言論統制をめぐる行方など私見を紹介します。

中津幸久 氏 略歴

元読売新聞 北京特派員
1983年読売新聞大阪本社入社。上海、香港、北京、シンガポールの各特派員、東京本社国際部次長、同調査研究本部研究員、大阪本社記事審査部長、広島総局長、大阪本社編集委員などを歴任。2018年11月定年退職。現在、関西外国語大学職員


2019年10月23日(水)第140回 吉村弘 氏

ベトナム在住23年

NHK ラジオ深夜便 20 年 伝え残したことなど

講演案内

60 歳で引退を決めていたのですが、チャイナ+ワンの一翼を担うベトナムへの進出企業が増えて断りきれない事案などあり、今年9月まで経営の陣頭に立ってきました。ベトナム人の後継者に事業譲渡し、現在はそれぞれの会社の相談役をしております。他方、繊維事業の方は市場が日本と言う特殊なマーケットですので、日本的な感覚をスタッフ並びに協力工場に植え付けて継続させる為、「要所要所」に首を出して「品位の維持」に努めております。  「ラジオ深夜便」の放送で反応の多かった話題や、起業してから現在に至るまでの成功譚・失敗譚を披瀝しながら、事業活動で私が感じたベトナムをお伝えし、ベトナムを好きになって貰えたらと思う次第です。また、臨時講師を通じて垣間見た地勢学的見地でのベトナム国の立地優位性、それを下支えする政府官僚達のすばらしさなど、ベトナムで感じた事をお話しします。

吉村弘 氏 略歴

元商社ベトナム総代表
イトマン入社。ベトナム総代表を歴任し、2001 年退職。同年 IBC( HK)設立、その出資会社としてベトナムに IBC 社起業。ベトナム在住23年。ベトナム国家大学ホーチミン市校工科大学臨時講師。一昨年までNHK 「ラジオ深夜便」のベトナムの現地報告で20年に渡り50回出演。66歳。


2019年9月25日(水)第139回 長尾健太郎 氏

シンガポール雑感

講演案内

ASEANのリーダーとして、また、アフリカ、中東、南米、南西アジアをも含む広大な経済圏の中心地として成長を続けるシンガポール。資源が少なく、土地も狭く人口も少ないというハンデをどのように乗り越えたか、日本とシンガポールの関わり、日本企業の取組みを踏まえご紹介します。また、シンガポールならではの多民族、多宗教を前提とした生活の魅力などをお伝えします。

長尾健太郎 氏 略歴

前 シンガポール日本商工会議所事務局長 大阪商工会議所 産業部 ライフサイエンス振興担当 副主幹

2005年に大阪商工会議所へ入所。研修担当、国際担当を経て2014年からシンガポール日本商工会議所・事務局長としてシンガポールへ出向。駐在中の4年間で、SG50(建国50周年)、SJ50(日星国交50周年)、日本人会100周年を経験。また、シンガポール政府の経済政策転換に伴う日系企業の混乱に対処した。帰国後、大阪商工会議所ライフサイエンス振興担当に着任し、医療機器ビジネス振興に取り組む。


2019年7月24日(水)第138回 松本康隆 氏

南京での生活と研究

旧南京神社拜
講演案内

2011年からの中国における日本語教員、ポスドク、建築史教員の生活、そして研究内容の一部をご紹介します。日中関係では尖閣諸島問題が激化していく時期から現在の比較的良好と言える状態までにあたるかと思います。そのような環境変化の中で、一日本人として、教員として、研究者としての交流、また、日本人コミュニティの様子や国際交流の現場を、さらに、研究活動や研究内容を通して、南京という都市の歴史、研究上の試行錯誤等を、ご紹介させて頂ければと思います。

松本康隆 氏 略歴

南京工業大学  建築学院  特聘副教授

2006年から奈良文化財研究所派遣職員、2009年から京都工芸繊維大学非常勤研究員、2011年から南京工業大学外国語与国際交流学院外国専家(日本語教師)、2013年から東南大学建築学院博士后(ポストドクター)、2016年から現職。